クランクブギ CRANKBOOGIE

自転車と、ブルースと、旅と。

シークレット・レース

タイラー・ハミルトン、ダニエル・コイル 著
児島 修 訳
小学館 発行


タイラー・ハミルトンが話した事を、ダニエル・コイルがタイラー本人の語り口で書いたノンフィクション。
彼と現役時代の自転車ロードレース界のドーピングの内幕がとても詳しく書かれている。ランスを告白せざる得ない状況に追い込んだ本。自分はタイラーのファンでもランスのファンでもないので、少し割り引いた気持ちで読んではいた。 でも。

『人生のすべてをかけて、成功するかどうかの瀬戸際に辿り着き、そして選択を迫られる。参加するか、辞めて家に帰るかだ。
あなたなら、どうするだろうか?』


長いし、重い話だが、サスペンス小説の様でもあり、読後はしっかり前向きになる本だ。児島さんの訳の力も大きいと思う。読んで良かった。


俺はこの間まで「ドーピングもひっくるめて自転車レースが好き」だった。
「この競技が始まった時からあるものだ」「人間らしいやん」「まず、その場に立つまでに凄まじいトレーニングを耐えなければならない」「リスクがあるのを分かっていながらやるのも一つの生き方だろ」「プロだし、興行なんだ」「他のプロ競技だって表沙汰にならないだけで」と。
だが、意見は変わって来た。


ロードレースを愛する多くの人に読んでほしい。
そして、ドーピングのない、新しい時代を、次の世代に。