クランクブギ CRANKBOOGIE

自転車と、ブルースと、旅と。

旅する力 − 深夜特急ノート −


「○○ 力」というタイトルが嫌いだ。
初めて使ったのを見た時は、もうそれがどんな本のタイトルか忘れてしまったが、良いと思った。
が、その後何にでもつけられるようになって、安易だ、と考えるようになった。 世の中今でもその傾向は続いている。 エエ加減にせえよ、恥ずかしくないんかい、と思っている。


だから、車内吊広告を見つけた時は複雑な気持ちだった。
「あの沢木耕太郎がこんなタイトルにするんか」「文庫本だからコチラが元祖なのかもな」「深夜特急の話はゼッタイ読みたいが、読んだらまた旅行したい気持ちがデカクナって困る」「少し放っておこうか」・・・


そう思ったが。 本屋で見つけたら即、購入。 一気に読んだ。


深夜特急」は、バスを乗り継ぎデリーからロンドンまで旅をする話、ということになっているが、実際の旅は香港から始まる。 それがまた、いいんだ。 シリーズの第1便、第2便(1巻、2巻)が発行された頃、自分は貯金をしては、年に1、2度、1週間程度の旅行をするのが楽しみだった。それは大学卒業間際、就職の内定書を担保に銀行がお金を貸してくれるダイヤモンド社のツアーから始まった。飛行機だけ団体で後は完全フリー。ユーレイルパスを使い、安宿に泊まり、ヨーロッパを5カ国、1ヶ月程かけて回った。
 

結局、それが自分の旅行スタイルの基本になった。格安の往復チケットだけ買って、現地に着いたら、その場の、その時の、気持ちに従って、行動する。 
いろんな意味で、自分も「深夜特急」の影響を確かに受けている1人なんだ。


おかげで、様々な人と出会うことができた。
「常識」が一つではないことが、身に沁みた。
自分がどんなヤツか。気づいていなかった部分を知ることができた。


だから、たまには、「1人旅」を勧める。若い頃も、年齢を重ねてからも、それぞれに、感じることがあると思う。



「恐れずに」
「しかし、気をつけて」


旅に出る者に送る、沢木さんの言葉には、本当に賛同する。
まあ、自分の旅行はあんなカッコいいものじゃないケド。



今回読んでいて、びっくりしたことがある。
自分がガンになって入院していた時熱心に読んでいた、近藤紘一の「目撃者」の編集に、沢木さんが関わっていたという記述だ。 いや以前は知っていて忘れていたのかもしれない。 だとしても。
間接的な形でも影響を受けていたのか! と。